旅行代理店スタッフは将来なくなる?AI時代を踏まえたキャリア

「ネット予約が当たり前になって、昔ほどお客様が来店しない」

── 旅行代理店の店舗で働いている30〜50代の方の中には、こんなモヤモヤを抱えている方も多いのではないでしょうか。実際ここ数年、大手旅行会社による店舗の閉鎖や人員整理が相次ぎ、従来のオフライン重視のビジネスモデルが揺れ動いています。しかも近頃は、AIや自動化の進展が業界全体を変えつつあると耳にする機会も増えてきました。

そんな中で、「このまま店舗スタッフを続けていても大丈夫かな」「自分の仕事はAIに奪われるんじゃないの?」という不安を覚えるのは当然ですよね。しかし、実際にどこまで変わるのか、何をどう準備すればいいかは意外と情報がまとまっていません。本記事では、旅行代理店で働く皆さんの視点に立ち、AIや自動化が具体的にどんな影響を与えているのか、店舗スタッフの仕事の将来は本当に危ういのか、今後のキャリアをどう考えればいいのかをわかりやすく整理してみました。少しでも「これなら自分にもできそう」「こうやって活躍を続けられるんだ」と前向きに思っていただければ嬉しいです。


最新技術やAIの影響

クラウド予約管理&RPA(ロボット化)

旅行代理店の店舗スタッフの仕事を取り巻く環境では、まず予約管理システムの高度化が挙げられます。大手旅行会社では長らく独自の予約端末を使って航空券や宿泊を手配してきましたが、近年はこれらがクラウド型システムに移行。オンラインでのデータ一元管理が進み、在庫確認や価格変動がリアルタイムに反映されるようになっています。さらに、RPAと呼ばれる自動化ツールを使って繰り返しの事務作業や入力作業をロボットに任せる事例も増えました。「予約の確認書をPDF化してメールする」「クレジット決済情報を会計システムに転記する」といったルーチンワークを、人間がやるより高速かつミスなく処理してくれるのです。

こうした仕組みの普及により、スタッフが手動で行っていた定型業務は確実に縮小傾向にあります。実際、繁忙期には大量の書類作成や転記作業に追われていたのが、一気に楽になったという声もあります。一方で「ロボットで十分なら、自分たちはいらなくなるのでは?」と感じる不安もあるかもしれません。でも実際には、ロボットはあくまで決まった手順に沿った処理を自動化するだけで、イレギュラー対応やお客様に合わせた柔軟な提案はまだまだ苦手。つまり、ロボットに仕事を奪われるというより、自分がロボットの面倒を見る側に回るというのが現実に近いです。AIやRPAが便利になればなるほど、人間スタッフはさらなる価値を出せる仕事にシフトしていく余地があるのです。

AIチャットボットの顧客対応

次に挙げられるのが、顧客対応におけるAIチャットボットの台頭です。近頃、複数の旅行会社がサイト上でチャットボットを導入しており、よくある質問(FAQ)や営業時間、簡単なプラン案内を自動で返せるようにしています。特に営業時間外や深夜でも対応できるため、問い合わせ数を大幅に削減できるメリットがあり、企業側は「24時間顧客対応を実現し、人件費を抑制する」ことを目指しています。

スタッフの視点から見ると、AIチャットボットが簡単な質問を処理してくれるので、自分たちはより難易度の高い相談やイレギュラー対応に集中できる利点もあります。例えば「海外航空券の複雑な乗り継ぎ」や「複数家族でのグループ旅行」など、個別対応が必要な場合は依然として人間のスタッフが担当。逆に「交通費がいくらか」など定型的な質問はチャットボットが一瞬で回答してしまうので、その分スタッフの負担は減少。ただ、「これもAIで足りるなら、自分は必要ないかも…」と不安を覚える方もいるでしょう。

事実、一部では「人間のカスタマーサポートを経由せず完結するオンライン予約が増え、対面や電話の問い合わせが激減した」という例もあります。しかし、全てのお客様がAI回答で満足するわけではないのがポイント。複雑な要望や具体的なプラン相談をしたい場合、やはりスタッフとのやりとりに価値があると感じる顧客層も根強いです。特に、高額な海外ツアーや記念旅行で失敗したくない人は、最終的に人間の助言を頼りたいもの。こうした「AIでは足りない部分」にこそスタッフの存在感が出せる時代に変わっているのかもしれません。

パーソナライズ旅行提案でAIはどう活かされる?

もう一つのトレンドは、AIを使ったパーソナライズ提案。顧客の検索履歴や嗜好データを分析し、「あなたにぴったりの旅行はコレ!」とレコメンドする仕組みが広まっています。海外の大手オンライン旅行サイトでは、ユーザーの年齢や過去のレビュー履歴、クリックした写真などを学習し、独自のアルゴリズムで最適なプランを提案してくれるサービスが続々登場中。国内でも大手旅行会社がAIでツアーを組み立てる取り組みを始めています。

この手のAIは、顧客のニーズをある程度推測して「誰でもそこそこ満足できる」案を大量に生成しますが、最終的に顧客の心をガッチリ掴むような「とっておきのプラン」を作るには、やはり人間がカスタマイズする段階が重要です。AIはあくまで大量の可能性を提示してくれるだけなので、それを絞り込んで具体化し、「この人の性格や家族構成なら絶対これが喜ばれるはず」と確信を持って薦められるのはスタッフの経験とコミュニケーション力あってこそ。ここに「AIが提示する案+人間の仕上げ」という新しいチームプレーのスタイルが生まれます。AIの得意分野(情報処理・パターン認識)とスタッフの得意分野(細やかな気配り・感情に寄り添う説明)を掛け合わせれば、従来以上にお客様を満足させる旅を提供できる余地が広がるわけです。


将来性の評価

「なくなる可能性が高い業務」とは

ここまでの技術動向を踏まえると、一部の業務がAIや自動化によって代替される可能性が高いことは確か。具体的には、以下のような分野が考えられます。

  • 定型的な予約手配・入力作業: 例えば航空券やホテルを予約システムで検索し、画面を見ながら手配情報を入力するだけの作業は、クラウドシステム+RPAで大幅に自動化されつつあります。
  • ありきたりな問い合わせ対応: 営業時間やキャンセル規定など、FAQに載っているような質問はAIチャットボットが瞬時に回答でき、人間が出る必要がなくなる場面が増えている。
  • 簡単なツアー説明やパンフレット渡し: パンフレットの代替としてオンライン上の情報提供が主流となり、店頭で資料を渡すだけの対応は減少傾向。

こうした領域に依存していたスタッフは、確かに仕事の重要度が下がるかもしれません。企業としてもコスト削減を狙って自動化を進めるため、「単なるオペレーション要員」は今後さらに厳しい立場になると予想されます。

逆に新たに生まれる業務・残る役割

一方、人間の店舗スタッフでしかカバーできない領域も明確になっています。前述の通り、緊急時のトラブル対応やイレギュラーへの創意工夫個別のお客様に合わせたきめ細かいカスタマイズ提案などは、AIがまだ苦手とするところ。特に高額商品や記念旅行などの特別なプランでは、人間との対面相談を重視する顧客が根強くいます。海外旅行初心者やご高齢の方などは、やはり「対面で聞きたい」「この担当者がいると安心」という心理が強い。

また、単なる手配ではなく旅行全体のストーリーづくり地域とのネットワークを活かすなど、人間特有のネットワーク力・コミュニケーション力で価値を生み出す分野は拡大するとみられます。例えば、地方の観光資源を掘り起こしてユニークな体験ツアーを作り上げる仕事や、海外現地のスタッフと連携して特別体験を手配する仕事など、AIが持っていない人間的なつながりやノウハウが強みになるのです。

こうした視点から、「旅行代理店スタッフが消えるかどうか」は、どの段階の業務にフォーカスしているかで大きく変わります。定型業務に集中している人は代替リスクが高い一方、提案型・コンサル型の仕事を得意とする人はむしろ需要が高まる可能性があります。結論としては、「全部がなくなるわけではなく、業務内容のシフトが避けられない」というのが実態に近いでしょう。


対策

キャリアアップや転職、起業を視野に入れる際のヒント

では、これから旅行代理店スタッフはどう備えればいいのか。まずは今の会社で進められるキャリアアップを考えてみましょう。店舗スタッフとしての経験を活かしつつ、デジタルやAIを学んでDX推進プロジェクトに参加する、または社内の企画・マーケティング部門に異動するなどのステップアップを目指す方法があります。AIの活用が進むほど、社内でも「AIを使える人」や「ITに明るい人」の需要が高まりますし、現場感覚を持ったスタッフがリーダーシップを発揮すれば大きな武器になるでしょう。

一方、転職という選択肢もあります。最近はホテルや航空会社、レジャー施設なども旅行に関連する人材を求めており、店舗スタッフ経験を評価してくれる場合があります。特にインバウンド需要復活に伴い、語学力や接客スキルを活かして観光関連に転職する例が増えています。オンライン専門の旅行ベンチャーに移って、Web接客やAI活用プロジェクトを担当する道も考えられます。「店頭接客」で培った“お客様の生の声を聞く力”は、デジタル企業にとっても貴重です。

さらに独立・起業という方法も。個人旅行コンサルタントとしてSNSやYouTubeを活用し、独自の旅プランや海外ツアーを販売する人もいます。大手が扱わないニッチ分野(例えば自転車旅行やアウトドア専門など)でマニアックな情報を提供すれば、コアなファンを獲得できる可能性は十分あります。海外に現地拠点を持ち、独自の仕入れルートで格安ツアーを組む人もいますね。独立には営業力や法的な面(旅行業登録など)のハードルもあるので、準備は必要ですが、自分の得意分野に特化できる魅力は大きいでしょう。

必要なスキルや情報収集のポイント

(1) デジタルリテラシー
AIやチャットボット、RPAなどの基礎を理解し、業務で使えるレベルにすることが大切。プログラミングまではできなくとも、どんな機能があり、何が得意・不得意かを知れば、システムとの付き合い方が上手くなります。オンラインでの研修や無料教材が増えているので、暇なときに少しずつ触れ慣れるのがおすすめ。

(2) コンサルティング力・ヒアリング力
お客様が言葉でうまく表せない希望を引き出す力が必要。短い会話でも「なぜこの旅行を計画しているのか」「どんな体験を求めているのか」を洞察し、提案につなげるスキルです。これはAIが苦手とする領域。傾聴や質問のテクニックを意識しながら接客するだけでも伸びていくので、毎回の対応を振り返ってみると良いです。

(3) ネットワークづくりと情報発信
業界内外の人と繋がることで、新しいアイデアやコラボ案件が生まれます。SNSで旅行の魅力を発信すれば、潜在顧客との接点が増え、業績にもプラス。またコミュニティで他社の成功事例をシェアし合えば、AI活用や接客スタイルのヒントが得られます。一人で不安を抱えるより、オープンに情報交換する方がはるかに有益です。

(4) 語学や異文化理解
インバウンド需要の復活もあって外国語需要は高まっています。英語だけでなく、中国語、韓国語など地域特化の語学を学ぶのも一案。旅行業は多国籍・多文化と関わる機会が多く、語学ができるスタッフは明確な強みを持てます。海外の現地とスムーズに連携できる人材は、長期的な市場価値も高いでしょう。


まとめ

  • AIや自動化で代替されやすい業務: 定型的な予約入力・簡単な問い合わせ対応・バックオフィスの書類作成などは機械化が進む。これらに依存した働き方だと将来が厳しい可能性あり。
  • 残る・むしろ拡大する領域: 個別の要望や複雑要件に応じたオーダーメイドプランの提案、高級・特別ツアーへの対応、緊急トラブル処理などAIでは補い切れない“人間ならでは”の部分。感情面に寄り添う接客や創造力もここに含まれる。
  • 企業の動向: 大手を含め、コスト削減・DXを進める中で店舗数やスタッフ数を減らす傾向があるが、その一方でAIを使いこなし、提案力やマネジメント能力を発揮する人材を求める。
  • 個人の対策: デジタルリテラシー、コンサルティング力、語学などを伸ばし、AIとの共存を前提に価値を発揮。社内キャリアアップ、転職、独立など多様な道が考えられる。

結局、店舗スタッフという職種自体がすべて消滅する未来はそう近くありません。むしろ業務内容が変化し、より難しい相談や高度なサービスを提供する方向へシフトすると言えます。AIの普及で自分の役割がどうなるか不安に思う方もいるでしょうが、言い換えれば「単純作業が減り、人間にしかできない部分に注力できる」時代とも捉えられます。大切なのは受け身にならず、自ら学び・適応しようとする姿勢です。


Q&A

Q1. AIやITに詳しくないので、学び方が分からない…
A. まずは社内のマニュアルや研修を積極的に活用し、RPAや予約システムを触ってみる。公的なデジタルスキル講習やオンライン無料講座もあるので、週末にコツコツ学べば意外と慣れます。最初は「苦手」と感じるかもしれませんが、慣れれば大きなアドバンテージに。

Q2. もう40代後半なのに、転職やキャリアチェンジは遅すぎ?
A. 全くそんなことはありません。旅行業で培った顧客対応力やトラブル対応ノウハウはどんなサービス業でも評価されます。実際に同業他社への転職で即戦力になったり、旅行×IT企業でカスタマーサクセス担当として重宝される例もあります。重要なのは意欲と学ぶ姿勢です。

Q3. 店舗スタッフのままでやっていける?
A. 店舗が消滅するとは限りません。むしろ高付加価値型店舗は残る可能性が大。例えば、高額や特別な旅行を望む顧客向けのカウンセリングをする高級路線や、体験型のショールーム店舗など。そこでは接客やコンサル能力が重要になります。店舗そのものが進化するイメージです。

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