「私の仕事、この先どうなるんだろう…」「AIや自動化ってニュースでよく聞くけど、どれだけ影響があるの？」──もしあなたが30〜50代の事務職に就いているとしたら、一度はこんな不安や疑問を抱いたことがあるかもしれません。事務作業は経理や人事、総務にいたるまで、いわゆる「書類を扱う」「PCでデータ入力する」業務が多いだけに、機械に仕事を奪われる可能性を感じてしまう方もいるでしょう。
しかし、技術が進めば必ず仕事が消えるのかといえば、そう単純でもないのが現実です。確かにAI（人工知能）やRPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）などの技術は急速に進化していますが、だからこそ「どんな業務がなくなり、どんな業務が新たに生まれるのか」をしっかり理解し、キャリアを再構築するチャンスでもあるのです。
本記事では、こうした不安を抱く方に向けて、「今どんな技術が登場しているのか」「なぜ事務職はなくなるといわれるのか」「実際にどんな変化が起こっているのか」といった疑問を掘り下げます。そして、そのうえで「これから生き残るための戦略」や「実際に行動を起こす際の心構え」について、できるだけ具体的に提案していきます。読後には、不安だけでなく前向きな活路を見いだせることを願っています。
最新技術やAIの影響
AI・RPA・DXとは？
ここ数年、事務職にも大きなインパクトをもたらすとされるキーワードが「AI」「RPA」「DX」です。
- AI（人工知能）: 大量のデータをもとにパターンを学習し、人間のような判断や推論を行う技術の総称。
- RPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）: パソコン上の定型的な操作をソフトウェアが自動的に繰り返す仕組み。ブラウザやExcelなどを操作してデータ入力するなど、人間が行っていたルーティン作業を代行できる。
- DX（デジタルトランスフォーメーション）: 企業や社会がデジタル技術を活用してビジネスやサービスを根本的に変革すること。
これらの技術が事務作業と結びつくことで、これまで人力で行っていた入力や書類のチェックなどが高速化・自動化され、結果として「事務職が担う業務量」が減っていく可能性が高まっています。
現場で実際に何が起きているのか
- OCR（光学文字認識）＋RPAによる自動入力
紙の書類やFAXで届く注文書などをスキャンし、文字データを取り込むOCR技術を使って情報を読み取り、それをRPAが自動的に基幹システムに入力するケースが増えています。以前は人手で入力していたので何人もの人件費や時間がかかっていたのが、ツールの導入によって数分の一に短縮されるといった事例が各社で報告されています。 - AIチャットボットの問い合わせ対応
社内からの定型問い合わせや、顧客・取引先からの簡単な質問にチャットボットが自動回答し、人間が対応するのは複雑なケースだけ、という形が一般化しつつあります。これにより事務やコールセンター部門の対応件数が減り、担当者の負担が軽減されているとの声も。 - 会計・経理ソフトの進化
銀行の入出金データを自動で取り込み、過去の仕訳パターンを参考に「この取引は旅費交通費」「こちらは交際費」と自動仕訳を提案するクラウド会計ソフトが登場しています。担当者はそれを確認・修正するだけで済むため、日次・月次処理のスピードが飛躍的に上がっているようです。
このように、どの企業でも導入しやすい領域から自動化・効率化が進んでいます。一度システムが安定稼働すれば、人件費と時間の両方が削減されるため、特に人数の多い大手企業ほど早期から導入を進めています。ただし、費用面や専門人材の不足などから、中小企業ではまだ導入が進みにくい環境もあり、一様にすべてが自動化されるわけではありません。
日本企業で起きている変化
大手企業を中心にDX推進が活発化しており、「定型業務＝機械に任せる」「人間はより高度な業務にシフト」といった考え方が広がっています。実際、事務職の定型タスクは技術的に自動化しやすいため、今後もさらに効率化が進むでしょう。
ただし、一方で「未だに紙ベースの業務が多く、社員が使いこなせない」「デジタル化しても現場が混乱する」という声も多く聞かれ、企業全体での変化はまだら模様となっています。事務の仕事はすぐには消滅しないともいえますが、着実に変化の波が来ていることは確かです。
事務職の将来性の評価
「なくなる可能性」が高い業務
事務職の中には、AIやRPAなどテクノロジーとの相性が抜群に良い領域があります。例えば、以下は特に代替リスクが高い部分と考えられています。
- データ入力業務: ルールが明確で、同じパターンを繰り返す作業。OCR＋RPAで大部分が自動化可能。
- 定型レポート作成: 数値を集計し決まった書式にまとめるだけの場合、ソフトウェアが自動的にアウトプットしてくれる。
- システムへの転記や複数システム間の連携: 担当者が画面を切り替えながら同じ情報を入力するような単調なタスクは、RPAの得意分野。
こうした業務はAI／RPAの導入が進むと急激に需要が減り、人が行う必要がなくなっていくのは避けられません。現在は残っていても、今後2～5年で削減・廃止される可能性が高いです。
新たに生まれる業務
一方で、AI導入によって「新しく必要になるスキルや役割」も生まれています。
- システム運用・保守やRPA管理: RPAのシナリオを構築したり、運用・メンテナンスしたりする役割。事務フローをよく理解している人ほど適任とされる。
- データ分析・レポーティング: AIが集めたデータをもとに分析し、経営層や現場へ提案する。単なる作業でなく、可視化や戦略立案に関わる部分。
- 現場のデジタル推進・DX推進担当: 部署横断的に業務改善を行い、ITツールを活用して効率化をリードするポジション。現場感を知っている事務スタッフがステップアップできるケースも多い。
これらは「AIにはできない部分」にフォーカスした仕事です。AIやRPAが苦手とする臨機応変な判断や微妙なコミュニケーションを伴う場面、また業務の仕組みを深く理解しているからこそできる運用サポートなど、人間の付加価値が光る領域が増えています。
「だからAIは怖くない、むしろ活躍の場が広がる！」とはいえませんが、これまで通りのルーチン作業だけをしていると危険である一方、変化を捉えて新しい役割にチャレンジしようとする人にはチャンスも訪れる──これが事務職の将来を巡る現実的な評価といえるでしょう。
対策
1. 今こそ“リスキリング（学び直し）”を
国や企業も「リスキリング（学び直し）」をサポートしようとする動きが出てきています。特に事務職の方は、業務の中で自然とPCスキルやデータ管理、情報整理の力を身につけている人が多いため、もう少し専門的な知識（プログラミングの基礎やRPAツールの操作など）を学べば、社内で「DX推進スタッフ」「業務改善担当」として活躍できる可能性があります。
今の職場で学ぶ機会がないという場合は、オンラインスクールや書籍、資格講座なども充実しているので、自分に合った方法を模索してみましょう。特に以下のような分野を学ぶと、AI時代の事務職として大きな強みになります。
- Excelの高度な機能（ピボットテーブル、マクロなど）
- RPAツール操作（UI操作、シナリオ構築など）
- データ分析の基礎（簡単な統計、可視化ツール活用）
2. 自ら「付加価値」を作る姿勢を
単純作業以外に、自分ならではの「付加価値」を作れる人は、これからも必要とされます。例えば、書類作成ひとつにしても、ただ形式的にまとめるのではなく、読み手が一目で理解できる工夫をする、グラフや図解を盛り込んで説得力を高めるなど、より高度な仕事の仕方を心がけると、頼られる存在になりやすいのです。
また、社内の人間関係を円滑にしたり、取引先とのコミュニケーションでスムーズに折衝したりといった“人間味”が必要な業務はAIには任せられない部分です。そこを積極的に担うことで、「この人がいるから社内が回る」と思われるポジションを築くこともできます。
3. キャリアアップの方向性を考える
事務職からのキャリアアップというと、人によっては「資格取得」「人事・総務など専門性の高い領域への移行」「営業事務やカスタマーサポートなどコミュニケーション重視の職種への転向」などさまざまなパターンが考えられます。
- 資格取得で専門家を目指す: 経理が得意なら簿記の上位資格を目指す、人事関係であれば社会保険労務士に挑戦するといった形で、今の事務経験を活かしながら専門性を高める道があります。
- 自社内の異動・部署転換を狙う: 中規模以上の企業なら、部署異動でステップアップできる可能性があります。経理事務を深めたい、DX推進部署に行きたいなど、希望を伝えておくとチャンスが巡ってくることも。
- 転職を視野に入れる: 「今の会社では事務職のまま将来が不安」「DXが進まない企業体質でスキルアップできない」と感じるなら、思い切って転職も選択肢になります。今までの経験を活かせる業種や職種を探してみると、自分のスキルが想像以上に評価されることもあります。
4. 不安を感じる人ほど早めに行動する
AI化や自動化が叫ばれるなか、「この先どうなるかわからない…」と不安を抱える人は多いものの、実際に行動を起こす人は限られています。ですが、不安を先送りにしていると、いざ組織の再編やリストラの対象になってしまったときに対処が遅れてしまいます。
逆に考えれば、今のうちに情報収集や学びを始めれば、周りがまだ動いていない分チャンスも大きいはず。「将来どうなるか」よりも「今、何ができるか」を考えることで、不安を前向きなエネルギーに変えることができます。早めに動いた人ほど、スキルを身につける余裕があり、社内外の選択肢を広げやすいというメリットがあります。
まとめ
AIや自動化が進めば、事務の仕事が激減するのは事実かもしれません。ただ、それは「事務がすべて消滅する」ことを意味しません。むしろ“定型的な単純作業”が自動化される一方で、AIでは対応しきれない領域（イレギュラー対応やコンサルティング、コミュニケーションが求められる部分など）に人材がシフトするため、事務職の役割は質的に変化していく、と捉えられます。
一方で、多くの人が「この先どうなるか分からない」と不安に感じ続けているのも現状です。ですが、行動すれば道は開けます。今からリスキリングに取り組み、ITリテラシーやデータ分析のスキルを習得すれば、社内の業務改善プロジェクトに関わったり、より専門性の高い事務ポジションにステップアップしたり、さまざまな選択肢が広がるはずです。
最後に、あなた自身に問いかけてみてください。「あと数年先、どんな自分でいたいか」「どんな仕事が楽しそうか」。小さな一歩でも、今日から学び始める、情報収集する、転職サイトをのぞいてみるなど、行動を起こしてみてください。
不安を完全に拭い去ることは難しいですが、“変化があるからこそ、新しいチャンスも生まれる”のがAI時代です。あなたの事務経験と強みにテクノロジーを掛け合わせれば、今後も十分に活躍の場があるでしょう。本記事が、次のステップを踏み出すきっかけになれば幸いです。
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